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インドでの日々を綴る


by ayako-ondes
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最近読んだ本より〜タゴール〜

     最初の日の太陽が
     存在の新しい出現にあたって
     たずねた―
     おまえは 誰か。
     返事はなかった。
     年はつぎつぎに過ぎ去って行った、
     その日の最後の太陽が
     静かな夕暮れ
     西の海の岸辺で 最後の質問を発した—
     おまえは 誰か、
     答は得られなかった。

     『タゴールの生涯(下)』 K.クリパラーニ/森本達雄訳 より

しばらく、ラビンドラナート・タゴール(1861-1941)の伝記を読み続けていました。
読み終わらないうちは何だか落ち着かなくて...日曜日、とにかく読み切りたく、一歩も外へ出ず読み続けていて、日も変わった2時すぎにようやく終わりました。

おもしろいもので、この本はデリーに来る前に日本で買ってきたのですが、以前は何か難しく感じてしまって、数ページでいつも挫折。

ところが、本屋に行けばタゴール関係の詩集や、著書がたくさん目につきます。
先日、タゴールと海外の各界の著名人との会話をまとめている本を買ってみました。読み始めて、やっぱりタゴールについて先に知っておきたいという気持ちになってきて、それでまた伝記を引っ張り出して...。

そうしたら、今度はおもしろくておもしろくて...。自然を愛して、人間を愛して、それらを自身の作品に表わしていったタゴール。インドに多少なりとも住んだおかげもあり、この本に書かれている自然描写や、季節から得る喜びなど、すんなりと実感できます。やはり経験は大切ですね。それにしても、こんなにいい本だったなんて...。読み続けられなかった以前が不思議なくらいスーッと入ってきます。

この伝記は、単なる彼の生涯の羅列ではなく、作品を紹介しつつ、人間性の描写に重点がおかれている点も興味深いところです。「自らに与えられた生命を完全に燃焼し、人間性(人間的な弱さや苦悩や悲哀までも)の可能性を極限まで生ききった一個の生命の貴重な記録でもある」とも書かれています。
著書のクリシュナ・クリパラーニは、ガンディーの反英闘争に参加して投獄、そのとき獄窓で読んだタゴールの詩に感銘を受け、出獄後シャーンティニケタンに赴き、タゴール設立の学園の一教師となり、のち、その孫娘と結ばれ、晩年のタゴールと起居をともにした人だそうです。訳者の森本氏もあとがきで述べているように、まさに「血の通った伝記」です。

最後の方では少し集中力も弱まり眠くもなってきてしまいましたが、最後の最後で、上に掲げた詩に出逢い、眠気が引きました。タゴールの死の10日ほど前のものです。そして、その後の解説にまたまた覚醒されました。その文章は、自分の中の中心に添えておきたいとも思ったのです・・・なんだか一気に目がパッチリ。今度は眠れなくなり、暗闇でヨガを始めました。

     真理は厳しいことを、彼(タゴール)は知っていた。しかも
     彼にとっては、真理だけが問題であった。

     彼は信じていた。

     生は死よりも重く、
     人間の精神は生よりも大きいことを、また
     生命と、自然と、物質の世界はひとつにつながっており、
     宇宙の法則によって支配されていることを。
     そして、その宇宙の法則の原理は、機械的なものではなく、
     精神的なものであるゆえに、
     たとえ部分的にせよ、それを理解する方法は
     頭脳によらず心情によらなければならない、
     推論によらず愛によらなければならない。

最近読んだ本より〜タゴール〜_f0099915_16193358.jpg

by ayako-ondes | 2007-07-02 03:55 | Tagore★タゴール