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インドでの日々を綴る


by ayako-ondes
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歌って 踊って、パンジャビ・ソング

数日、スタジオからの帰りが夜遅くなる日々が続いていました。もう、酔いそう...スタジオ酔い。パンジャビ・ソングの制作のためで、昨夜の夜中にようやく終わりました。

パンジャビ・ソングは、パンジャビー語で歌われるパンジャブ地方の歌ですが、一般にパンジャビ・ソングといったら、インド版ロック・ミュージックといったところ...。

パンジャブ州には、シーク教の総本山ゴールデン・テンプルもあり、シーク教徒(男性はターバンを巻いている)も多い場所。パンジャブ出身の人は、陽気で明るくフレンドリーで、エモーショナルと言われているように、パンジャビ音楽も、とってもネアカのお祭り音楽で、数年前からとても人気がある。ボリウッドの映画の中にも多く使われ、単独でのCDも多数あり、結婚式やその他のファンクションでも、ディスコでも、歌って踊れる音楽として重宝されている。
私もこの手の音楽は調子がいいから好きである。いつも聞く訳ではないけれど、止まって耳をすますよりも動きたくなる音楽なので、掃除がはかどる。
歌って 踊って、パンジャビ・ソング_f0099915_19492493.jpg

パンジャブは、ヨーロッパの中のイタリア、日本の中の大阪に近いと感じている。パンジャブ・ソング、旋律はインド特有のうねりも多少あってインド調ではあるけれど、ベル・カントで美声を思いっきり響かせて歌い、声を自在に扱える高い歌唱力も必要。
で、大阪というのは…、パンジャビ・コントというのがあって、それがいわゆる大阪漫才のノリかな?って、そんなとりとめのない思いからです。

常にタブラやその他のリズム系の楽器がリズムを刻んでいて、時々「ハイハイ」などなどのかけ声やコーラスによる間の手も入ったりして、とにかく調子がいい。
インド人は歌が好きというだけでなく、歌がうまい人がとても多く、職業としていない人でも自分でCDを作ったりしています。

今回、スタジオでみんなで制作していたパンジャブ・ソングは、それが本業ではないけれど、歌が好きで、CDを作りたいという依頼者からのもので、ムンバイのあるところに頼んで一旦作ったけれど、あまり気にいっていないので、音楽を変えたいということでありました。

そしていよいよそれが出来、聞いてもらうことに…。みんなで依頼者の顔、反応を見ながら、ちょっとドキドキしながら、音楽がスタート。

依頼者の表情はあんまり変わらない。聞くことに集中している様子。
それも無理ないかもしれないな...。音楽の方はかなり作り変えたので、とまどいもあるだろうし、比較しながら聞くだろうし、頭の中はけっこう忙しく動いているようだ。
私たちのコンセプトは、歌詞の内容にある少年が少女をダンスに誘うところから、一緒に踊るところまでを、楽器を変えたりしながら表現したかったこと、また、ただただノリだけのありきたりなものでなく、違う雰囲気を出そうとしていた。
結果、出だしが特に、穏やかに始まるパンジャビ・ソングとなった。
依頼者にとっては、その前奏の部分が気持ちを高めていくには、パンチが十分でなかったらしく、正直最初の一言はあまり気にいっていない様なことを言われました。
それから、お互いの意見交換と、ヨッシャ、それでは…と、音楽をできるだけ依頼者の希望通りに変えていく作業が始まりました。
いつも思うのですが、意見交換などになると、インド人はとっても正直に自分の思っている事を言う。すぐに譲るのでなく、言われた相手も自分の考えやその良さなどを主張する。時々意見はぶつかったりもするし、数人が同時に話していたり、けんかにならないのかなと思うけれど、そのことでお互いが気分が悪くなるということはなく、時々笑いもあり、展開していく。ババールさんも、自分のコンセプトを強く主張し、音楽を聞かせながら、音楽に合わせて身体を横に動かしたり、大きなジェスチャーで指揮者のように振る舞い、「ハイハイ、ここが素晴らしい! どうよー!」と言わんばかり…。録音エンジニアも、何とか応えようと必死でPCと戦っている。そして、じわじわとどちらかが引っ張る方向へ進んでいく。綱引きを見ているような感じではあるけれど、結局は、お互いいいものを作ろうという共同制作になっているわけですね。
そして、最後には、改善し再び作り直した音楽に、依頼者本人が歌を付けて、録音を全て完了したのでありました。

このセッション、6時間以上続き、夜中12時を過ぎにみんなで遅いディナーを食べた。それもコテコテのインド料理、しかし、特別美味しいレストランからデリバリーしてもらったとかで、本当に美味、ついつい食べてしまう。お腹にたまりそう...。
しかしその時には、依頼者の顔は笑顔、笑顔…。どうしてかわかりますか? こんなに時間がかかったのも、ババールさんと、ババールさんの娘バニーが、歌の指導をつけて、依頼者の満足できる素晴らしい音楽へと仕上げたからです。歌はさすがに趣味程度なので、いつも鍛えている歌手のようにはいかず、何度も何度もやり直しの連続で、根気勝負。ネアカなパンジャビを歌うためには、心から陽気になってもらわないことには…。最初堅かった依頼者の心をどうにか解きほぐし、最後には、ノリノリにさせる。

そしてとどめは、そのできあがったCDを依頼者の車に持っていて、カーステレオでみんなで聴いてみる。どうしてカーステレオなのか不思議に思っているのは私だけのようでした。さすが新品の日本車●ヨ●、オーディオが良かったのかどうかは知らないけれど、依頼者も、お付きの運転手も大満足。ここまでくるのに、新たに作られた音楽も何度も聴いて耳慣れ、また何よりも、数段レベルアップした自分の歌に大満足だったんだろうな…。
夜中にも関わらず、車のドアを全開にしてしばらくカーステレオをご近所に響かせながら、ババールさんと依頼者、録音エンジニアは、握手したり、笑い合ったり、抱き合ったり…。一件落着、久々に「水戸黄門」を見たような後味でありました。


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by ayako-ondes | 2007-02-23 23:19 | Music★音楽